雇用関係助成金とは

雇用関係助成金は、労働者の職業を安定させるという趣旨で設けられている助成金です。

厚生労働省が提供する助成金であり、雇用の安定、職場環境の改善、仕事と家庭の両立支援、従業員の能力向上等に役立つように様々な種類の助成金が用意されています。

雇用関係助成金の種類

雇用関係助成金には、①従業員の雇用維持を図る場合の助成金、②離職者の円滑な労働移動を図る場合の助成金、③従業員を新たに雇い入れる場合の助成金、④障害者の雇用環境整備関係の助成金、⑤雇用環境の整備関係等の助成金、⑥仕事と家庭の両立に取り組む場合の助成金、⑦キャリアアップ・人材育成関係の助成金、⑧労働時間・賃金・健康確保・勤労者福祉関係の助成金があります。

雇用調整助成金とは

雇用調整助成金は、上記の助成金のうち、①従業員の雇用維持を図る場合の助成金として、位置づけられています。

後述のとおり、雇用調整助成金は、緊急事態に応じて要件が緩和される等の対応がされることがありますが、原則として、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が対象です。
また、助成金には、助成率が定められており、休業手当に対して中小企業には2/3、大企業には1/2の助成をするというように割合が決まっています。
なお、計画届は事前提出が原則になります。

休業手当とは

休業手当とは、労働契約上、労働義務がある時間について労働者に働く意思と能力がある状態にもかかわらず、「使用者(会社)の責任」で休業するよう指示した場合に、労働者に対して支払う手当のことです。
使用者は、休業手当として、休業期間中に労働者に対して当該労働者の平均賃金の6割以上の手当を支払うことが義務付けられています。

「使用者の責任」が認められるのは、開店時間が店長の寝坊で遅れる等の使用者に故意や過失等があるにとどまりません。使用者に過失があるとは言い難いような、流通が止まって資材が入手できなくなる等の経営上の障害による休業指示の場合も含まれます。

他方、感染症法による建物封鎖等、法律や行政に基づく処分により事業所を開けない等の場合には、「使用者の責任」に該当しない事情の一つと考えられます。
しかし、仮に施設の使用制限等がされたとしても、在宅勤務や施設を使用しない事業運営等の他の方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合に、十分検討しないで休業をしてしまうと、「使用者の責任」に該当する可能性もあり、休業手当の支払いが必要となることも考えられますので、注意が必要です。

雇用調整助成金の手続

①休業計画の策定

いつから、何人休業し、休業手当は何%か(60%以上)等、具体的な内容を検討します。

②労使協定

労働組合又は労働者の代表者と話し合い、合意します。

(③計画届の提出)

雇用調整の計画の内容について事業所の所在地を管轄する都道府県労働局・ハローワークに計画届を提出します。
なお、後述の新型コロナウイルス感染症による特例では、計画書の提出が休業実施(④)の後にできるように要件が緩和されました。

④休業等の実施

計画届に基づいて休業を実施します。このとき、客観的な証拠が残るように、従業員毎にタイムカード等の出勤管理をします。
また、従業員毎に休業手当の額を給与明細や賃金台帳に記載します。

⑤支給申請

申請書を作成し、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局・ハローワークに提出します。
厚生労働省のホームページを参照し、申請期限や必要書類に注意してください。

⑥労働局審査

労働局が支給申請の内容について審査します。

⑦支給決定指定した口座に、助成金が振り込まれます。

雇用調整助成金の要件緩和等(令和2年5月19日時点)

雇用調整助成金は、平成28年の熊本地震の発生に伴う特例、令和2年の新型コロナウイルス感染症の影響による特例等、要件が緩和されることがあります。

新型コロナウイルス感染症の影響による特例では、売上減少率の基準の緩和や計画届の事後提出を認める等いくつかの要件が緩和されました。
また、助成額につき、助成率が増加され、特例が拡充されています。

助成額は、次のように変更されました。
すなわち、中小企業で「新型コロナウイルス感染症の影響を受けている」等の一定の要件をみたす場合は、休業手当の8割を助成します。

さらに、①「解雇等を行わずに」雇用を維持して、②休業手当として支払う平均賃金の6割以上支払っている等、一定の要件を満たす場合には、平均賃金の6割までの部分が9割助成、6割を超える部分が10割助成となり、最大9割4分を助成することになります。

これに加えて、①「解雇等を行わずに」雇用を維持し、②「中小企業が休業要請の対象施設に指定されて協力し」、③休業手当を平均賃金の10割支払うか、8330円以上の休業手当を6割以上支払う等、一定の要件を満たす場合には、休業手当の10割を助成します。

このように、国は、緊急時には助成金の要件緩和等により企業を支援します。
詳しくは、厚生労働省のホームページでご確認ください。

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