労務問題でお悩みの経営者の方へ

従業員がケガをした時の注意点は?

労災事故が発生しました。当社の対応で注意すべき点はありますか。

まずは負傷者の救護をしましょう。
そのうえで今後行われる調査や捜査への準備を行うべきです。

1.まずは負傷者の救護が第一

労災事故が発生した場合、使用者は被災した労働者を救助し、治療を開始する義務を負います。
これを使用者の救護・治療措置義務といいます。
この義務は労働契約上、使用者として当然に負う条理上の義務とされています。

労災事故が発生して冷静な判断ができないかもしれませんが、まずは救急車を呼ぶなどして負傷者を適切に救護しましょう。

2.会社としてすべきこと

(1)現場の保存

労災事故が発生した場合、労働基準監督官による調査や警察に捜査が行われる可能性があります。
発生した労災事故が重大なものである場合、労働基準監督署や警察による実況見分が行なわれることが多いといえます。
そのため事故があった現場を保存しておく必要があります。

(2)労働基準監督署への届出

労災事故が発生し、労働者が負傷した場合、会社は労働基準監督署へ労働者死傷病報告書を提出しなければなりません(労働安全衛生法100条、同規則97条)。
事業主が故意に報告書を提出しない場合や報告書に虚偽の内容を記載して提出することを一般的に「労災かくし」といい、これを行った場合には50万円以下の罰金に処せられることがあります(労働安全衛生法120条5号)。

これまで厚生労働省は何度も労災かくしについて通達等により厳しく対応することを周知しています。
そのため、労働基準監督署も労災かくしについては厳正に対応しています。

したがって、労災事故が発生した場合には、必ず労働基準監督署へ届け出なければなりませんので、その準備を進めることになります。

(3)事実関係の調査

労災事故が発生した場合には、すでに述べたとおり、労働基準監督署や警察による捜査が行われることがあります。
その結果、行政処分がなされたり、刑事責任を問われたりすることがあります。
また、会社は、使用者としての安全配慮義務に反することを理由に労働者から損害賠償請求を受ける可能性もあります。

一度労災事故が発生すると、今後想定される事態について様々な対応をしなければなりません。
その対応の中で一番重要なことは、今回の労災事故がなぜ発生したかという事実関係を十分に調査して、その内容を記録に残すことです。
人間の記憶は時間とともに曖昧になっていきます。後日労働基準監督官や警察官からの聴取にあたり、事実と異なる内容を真実だと誤認して述べてしまうかもしれません。
そのことにより、本来負わないはずの責任を負担してしまうということもあり得ます。

また、労働者からの損害賠償請求は事故発生から早くて数か月、遅ければ事故から数年経過した時になされます。
会社が責任を争うために事実関係を調査しようとしても、当時の関係者が忘れていて覚えていないことや退職して話すら聞けないということも珍しくありません。
有利な証拠があったとしても、それを利用することができなくなってしまうことが想定されます。

そのため、事実関係の調査をして記録に残すことが、もっとも重要なことといえます。

3.弁護士にご依頼いただいた場合の対応

弁護士にご依頼いただいた場合には労働基準監督署の調査や警察による捜査に対するアドバイス、調査等への立ち会い等を通じ、会社が本来負うべきでない責任を負わないようサポートします。
また労働者からの請求に対しても、事実関係にもとづき適切な法的主張を行えるよう準備し、交渉に臨みます。

4.最後に

不幸にも労災事故が発生してしまった場合には、今後予想される手続きを念頭に置き、十分な準備をする必要があります。

もっとも、会社や従業員の方にとって、一番良いのは労災事故が起きないような就労環境を作り上げることです。

危険を伴う業務を営む事業者の皆様には、一度ご相談いただくことをお勧めします。

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