労働審判と訴訟の違い

労働審判と訴訟

解雇問題や賃金問題など、個々の労働者と事業主との間に生じたトラブルを裁判所を通じて解決するには、労働審判手続による方法と、訴訟手続による方法が考えられます。

労働審判は、裁判官1名と専門的知見を有する審判員2名の3人で組織された労働審判委員会が行う解決手続です。
裁判官だけで行う訴訟手続とは異なり、裁判官以外の審判員が関与するため、実情に即した実効的解決につながりやすくなっています。

また、労働審判手続は、適宜話し合いによる解決を試みつつ、原則として3回以内の期日で審理され、「労働審判」という解決案が提示されます。
そのため、3か月程度での迅速な解決が期待できます。

もっとも、手続きを経て出された労働審判に対して異議が申し立てられると、労働審判は失効して自動的に訴訟に移行することになっています。
このほかにも、事案が複雑である等で労働審判手続きが不適当であると労働審判委員会が判断した場合には、訴訟に移行することになっています。
そのため、3回以内で解決できないような、深刻・複雑な紛争の場合には、最初から訴訟をすることが適当といえます。

労働審判の流れ

  1. トラブルが発生した後、原則として地方裁判所本庁に対して労働審判を申し立てます。
    なお、本庁のほか、労働審判取扱支部となっている支部(東京地裁立川支部、福岡地裁小倉支部、静岡地裁浜松支部、長野地裁松本支部、広島地裁福山支部)に対しては、申立てが可能です。
  2. 申立てが受け付けられると、期日が指定され、審理が行われます。
    上で述べたように、期日は原則として3回以内です。 期日における審理では、事実関係や法律論に関する双方の主張を整理し、証拠調べが行われます。
    また、話し合いで円満に解決できる見込みがあれば、話し合いによる解決(調停)が試みられます。
  3. 3回目までに話し合いがまとまれば、調停成立として手続きは終了します。 3回目の期日までに調停が成立しない場合には労働審判という形で、労働審判委員会から解決案が示されます。
    当事者双方が2週間以内に労働審判に異議を出さなければ、労働審判が確定し、手続は終了します。
    なお、成立した調停や確定した労働審判は、強制執行手続によって内容を実現することが可能になっています。 当事者の一方から労働審判に対して異議が出されると、労働審判は失効し、訴訟に移行します。

労働審判手続の費用

裁判所に納める手続費用として、手数料(印紙代)と郵便切手代がかかります。
手数料は請求額に応じて加算されていきますが、労働審判の手数料は低額に設定されています。
例えば、200万円の請求であれば7500円程度です。

郵便切手代は、申し立てる裁判所によって要求される額は異なりますが、おおむね2000円程度です。

このほかに、弁護士に依頼するのであれば、弁護士費用が別途必要になります。

労働審判は柔軟な手続なので、弁護士に依頼せずに行うことも一応は可能です。
しかし、弁護士を依頼した方が妥当な解決につながりやすくなります。
権利関係を明らかにして進める手続であることは訴訟手続と変わらず、事前に証拠を収集して準備し、主張を的確に整理して立論することが必要だからです。

もう1人で悩まないでください。
弁護士が解決します。